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お知らせ民主教育活動紹介・見解

「小学校学習指導要領案」について

「小学校学習指導要領案」について

2017年3月15日
大阪教職員組合

 

(1)極限にまで達したつめ込み教育について
 「改定案」は、2016年12月21日の中教審「答申」にもとづき、小学校3年生で年間980時間、小学校4年生以上は1015時間と大幅に授業時間数の増加がみられます。これは、発達段階を全く無視した、極限を超えたつめ込み教育となっています。この授業時間数は、全国の3割を超える自治体が白紙撤回を求めた1989年学習指導要領時と同じ授業時間数です。しかし、現行学習指導要領においてその時の内容はすでにつめ込まれており、そこに「英語教育」などで量が増加し、「質・量」ともに極限状態になります。1989年指導要領は週6日制でしたが、今回は週5日制で行うこと、また全国の多くの学校が現行学習指導要領のもとで、標準授業時間数に上乗せした時間割で授業を行っているため、さらなる負担を強いることになります。
 このような「質・量」ともに極限状態の学習指導要領に、どれだけの子どもがついていくいことができ、教育内容をしっかりと習得することができるのでしょうか。子どもたちの実態を無視したつめ込み教育では、大量の勉強ぎらい、学校ぎらいを生み出す危険があります。授業時間数について、見直しを行うことが必要です。

 

(2)英語教育について
 小学校段階では母語をしっかりと身につけることが優先すべきであり、英語教育の早期化・教科化においては、多くの専門家から問題があると指摘されています。しかし、次期学習指導要領では、小学校3・4年生では、いま高学年で行っている「外国語活動」を行い、5・6年生では教科として「英語」を行うこととしています。
 内容もとても高度なものとなっています。小学校で扱う単語数は600~700語となっており、現行の中学校学習指導要領での単語数が1200語といったところからも、子どもに過重な学習負担を強いることは明らかです。また、これまで中学1年生で習っていた文法事項の一部を5・6年生でとり扱うことになっています。その他にも、小学5・6年生の英語の内容は、現行学習指導要領の中学1年生で扱う内容と酷似していることは大きな問題です。
発達段階や系統性を無視した、小学校における英語教育の早期化、教科化はすべての子どもたちに、英語を学ぶ楽しさや学力をつけるものには遠く及ばず、大量の英語嫌いを生み出したり、母語の発達に悪影響をおよぼしたりする危険性があります。次期学習指導要領で示されている英語教育は、抜本的に見直すことが必要です。

 

(3)道徳の「教科化」及び育成すべき「資質・能力」について

 「改定案」では、前文を新たに設け、教育基本法第2条の目標を書きこみ、「我が国と郷土を愛する」など「愛国心」の押しつけを幼稚園段階から強化するものとなっています。国旗・国歌の押しつけをはじめ、道徳の「教科化」にもみられるように、特定の価値観の押しつけによる、内心の自由の侵害がさらに強まることが大きく懸念されます。
 また今回の改訂で、国が求める「資質・能力」が明記されています。本来、教育の目的は「人格の完成」であり、子どもたちの全面発達を保障するものです。しかし、国が新たに育成すべき「資質・能力」を規定することは、教育の目的を「人格の完成」から国や財界が求める「人材育成」へと変質させるものでしかありません。また、その育成すべき「資質・能力」の中に「人間性」までも含まれていることは大きな問題です。これは、子どもたちの人格形成までをも管理・支配しようという表れであると考えます。そして、道徳の教科化・全教科の道徳化を教育目標に反映させたものです。道徳の教科化は、教科として国が規定することで、検定教科書を使用し、評価をすることを押しつけられ、特定の価値観を植え付けます。個人の尊厳を守り、子どもを成長・発達の主体として全面発達を保障するためにも、国が子どもの人格をまるごと評価、管理しようとしていることは断じて許すことはできません。

 

(4)教育方法、評価方法、学校管理運営まで及ぶ、管理と統制の強化について
 「改定案」では、「アクティブ・ラーニング」という言葉は消えましたが、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」が強調され、授業方法にまで踏み込んでいることに変わりありません。また、「カリキュラムマネジメント」の重要性が強調されていることも大きな問題です。あくまで学習指導要領は教育内容の大綱的基準であり、今回の「改定案」のように、教育方法や評価方法、学校管理運営にまで踏み込むことは、学習指導要領を用い学校への管理と統制を強めることにつながり、断じて許すことはできません。

 以上より、「小学校学習指導要領案」の抜本的見直しを求めます。

 

(2017.4.7)